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【インタビュー】スモールPMI—中小企業M&Aの成功に必要な視点

PMI(Post Merger Integration)とは、一般的に「合併後の統合プロセス」を指し、買収した企業と自社を統合するためのもので、従来、大企業同士のM&Aで論点となってきたものです。近年は中小企業のM&Aも増加し、2022年3月には中小企業庁が「中小PMIガイドライン」を公表したことで、中小企業M&AにおけるPMIへの関心が高まっています。
そこで今回は、2023年4月14日に中央経済社より刊行する『中小企業のM&Aを成功に導く スモールPMI実務入門』の執筆代表である寺嶋直史氏に、中小企業のM&AとPMIについてお話をうかがいました。

-中小企業M&AにおけるPMI(スモールPMI)の実態は?

「中小PMIガイドライン」において指針は示されたものの、スモールPMIはまだ手法が確立されているとはいえず、どの企業も正確に実施することができていません。PMIを試みる企業も現れてはいますが、なかなかうまくいっていないというのが実態だと思います。
その理由としては以下の5つが考えられます。

  1. 大企業向けのPMIのフレームワークをそのまま用いている

  2. スモールPMIでは「統合」するケースは少ない

  3. 譲渡企業の財務諸表が実態とかけ離れている

  4. 買収後に譲渡企業のさまざまな問題が発覚することが多い

  5. コンサルティング力のないM&A専門会社がPMIにも関与している

詳細は本書をご覧いただきたいのですが、スモールM&Aの場合、譲渡企業は経営体制・組織体制・業務体制が脆弱で管理・統制が不十分、かつ財務諸表が実態とかけ離れており、赤字の事業を抱えていることも非常に多いです。
そもそもスモールM&Aは安価であり、各種デューデリジェンスを実施しないケースが多く、買収後に譲渡企業にさまざまな問題が発覚することが多々あります。仮にデューデリジェンスを実施したとしても、簡易的なものであるため、細かい会計資料まで調べることができなかったり、社長にヒアリングをしても、事実と異なっていたり、都合の悪いことは言わなかったりといったことが起こりがちです。そして、現状把握ができていないままM&Aを進めてしまうことで、譲受企業の経営者はさまざまな問題に対処することが難しくなってしまうのです。
このように、大企業向けとは大きく異なるスモールPMIに関して、あるべき姿を市場に提案し、具体策を提示したいという想いでまとめたのが、本書『中小企業のM&Aを成功に導く スモールPMI実務入門』です。

-スモールPMIのあるべき姿、必要な視点は?

スモールPMIでポイントになるのは、大きく、

  1. 経営改善

  2. 価値向上

  3. シナジー

の3点です。
スモールPMIは、大企業のPMIと大きく異なります。それは前述のとおり、大企業と違って中小企業の譲渡企業は多くの問題を抱えているケースが多いためです。それにもかかわらず、スモールM&Aでは譲受企業は財務デューデリジェンスやビジネスデューデリジェンスを行わずに買収しているので、買収後にさまざまな問題が起きており、M&Aが失敗だったと考える社長も少なくありません。
そのため譲渡企業をそのまま譲受企業に統合することはできませんし、組織を統合せずに譲渡企業を単独で運営する場合でも、譲渡企業をそのまま運営するのでは買収した意味がなくなってしまいます。したがって、スモールPMIでは、まずは譲受企業のビジネスデューデリジェンスを行って譲渡企業の内部環境を正確に把握し、そのうえで以下の施策を行うことが重要になります。
まずは、内在するさまざまな問題を解決する「経営改善」を行います。例えば業務が属人的で手作業が多い場合、IT化などで業務の効率化を図ります。次に、強みを把握してそれを活かした施策を行い「価値向上」を図ります。Webサイトの環境を整えて自社の価値を顧客に発信し、認知度を高めていきます。続いて、製品や顧客、生産体制などについて譲受企業と連携して「シナジー」を発揮させていくのです。
こうすることで、譲渡企業をピカピカに磨き上げることができ、さらに譲受会社と譲渡企業が互いに作用し合い、効果や機能を高めることができるのです。

-本書の特長、読者ターゲットは?

本書は、従来の大企業向けのPMIとは異なる、中小企業のPMIに特化した「スモールPMI」の内容であり、M&A成立後の「業務(手続き)」だけでなく、中小企業のM&Aを成功させるために必要な「施策」をすべて網羅しています。そのため、M&A業務に関連している事業者の皆さますべてにお読みいただきたいと思っています。

-本書の執筆に携わったのはどういったメンバーですか?

執筆メンバーは、中小企業診断士、弁護士、税理士、ITコンサルタントであり、事業再生、M&A、IT・マーケティングなど、全員が各分野の第一線で活躍しているプロフェッショナルです。そのため、PMIの業務や施策に関するさまざまなノウハウを詳細に紹介しています。

-本書の活用方法について教えてください。

各項目を見開き2ページ(1ページの場合あり)に収め、左側に文章、右側に図表を配置しており、PMI初心者でもわかりやすい構成になっています。そのため、事前にPMIの業務を習得する時だけでなく、PMI実務の際に必要な箇所をチェックしながら進めていただけます。
また、読者特典として「経営分析シート」「事業調査報告書(サンプル)」のダウンロードサービスもありますので、譲渡会社の経営分析やビジネスデューデリジェンスの際にぜひご活用ください。

登壇者紹介

寺嶋 直史(てらじま・なおし)

事業再生コンサルタント、中小企業診断士、株式会社レヴィング・パートナー代表取締役。大手総合電機メーカーに15年在籍し、部門で社長賞等多数の業績に貢献、個人では幹部候補にも抜擢される。その後独立してコンサルティング会社を立ち上げ、多くの中小の再生企業を再生に導いている。その他、1年で一流の経営コンサルタントを養成する「経営コンサルタント養成塾」の塾長として、金融知識、問題解決の思考法、ヒアリング手法、事業DD、財務分析、経営改善手法、事業計画、ブランディングなど幅広い講義を実施している。


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